2012年3月18日日曜日

寺崎先生と出合う

いつの日か、こういう日も来るのかもしれない…そう思っていたことがやってきた。日本オペレッタ協会の創始者であり、現在の名誉顧問、寺崎裕則先生との出合いである。話はやたらと突然だった。現在の私の職場に先生から電話がかかってきたのだ。いわく、ガレリア座でミレッカー作曲のオペレッタ「乞食学生」を上演した経緯について話を聞きたいとのこと。オペレッタに魅了され、自身、カンパニーを立ち上げてまで上演をしてきた私にとって、寺崎先生に言われれば否応もなく、夏の一日、資料を携えて先生のお宅のある成城学園前駅へと伺った。先生は天皇陛下のご学友である。つまり昭和8年生まれの79歳。私に微笑んで近づいてこられた先生は、その年齢を感じさせず、じつに矍鑠としている。とにかくお元気なのだ。 喫茶店で資料をお渡ししてからは、実際「乞食学生」の話などしたのを忘れてしまうほど、オペレッタ上演の苦労話、最近のオペラ演出のあり方、芸術論や教育論、文化行政のあり方から芸能裏話まで、とにかく時間がたつのを忘れて話し込んだ。先生もこの物好きを珍しがってくださって、その後、お宅まで伺って、《ヴェニスの一夜》の資料まで頂戴した。出合いの一日は、こうしてあっというまに過ぎ去った。 でも、ご縁はこれだけでは終わらない。 今年、2月に日本オペレッタ協会は、最後のオペレッタ作曲家として知られるシュトルツの人生を綴ったオペレッタ《ローベルト・シュトルツの青春~二人の心はワルツを奏で》を上演した。その本番近い稽古に、私は厚かましくも二度ほど伺い、プロによるオペレッタの制作現場を堪能させていただいた。このオペレッタは寺崎先生の台本によるオリジナル作品で、シュトルツのオペレッタ名曲の数々をシュトルツ本人役の演者が語りでつないでいくスタイルをとっている。シュトルツ役を演じたテノールの田代誠さんは、語りに歌にと負担の大きな役どころを見事に演じられた。 だが、その直前稽古では、事情により寺崎先生が田代さんに代わって、その語りを引き受けた。もちろんこれは稽古だから。けれど、けれど、その語り口のなんとも素晴らしいこと。まるでシュトルツ本人が話しているかのように、とても鮮やかに情景が目の前に広がってゆく。同行していたガレリア座のメンバーも同様の感想を持ったようだった。 こういうことがあるから稽古場は楽しい。 2月25日、北とぴあ・つつじホール。終演後にガレリア座のメンバー25人ほどが寺崎先生を囲んだ。先生からは「《ヴェニスの一夜》がんばってください。」と、激励のお言葉。日本オペレッタ上演史に名を残す演出家・プロデューサーからのお言葉は、熱く、重く、私たちの胸に響いたのだった。

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