2012年4月2日月曜日

浅草オペラ

今、信濃町駅前の民音音楽博物館で企画展「浅草オペラの時代展~大衆文化の転換点・大正時代誕生100年を迎えて~」が開かれています。期間は7月1日まで。毎週月曜の休館以外、無料で見られるので足を運ばれてはいかがでしょうか。3月29日に同展を記念した文化講演会がありました。今や、すっかり仲良くなった日本オペレッタ協会名誉顧問の寺崎裕則先生と、先生の盟友でもある脚本家の清島利典さんが対談形式で行う講演会でした。元松竹歌劇団の甲斐京子さんが「おてくさん」「コロッケの唄」「君恋し」などを披露してくださり、平日の昼間というのに満員御礼の客席も大いに盛り上がりました。ウィンナ・オペレッタだけでなく、フランス・オペレッタにもどっぷりハマっている私は、以前、江戸東京博物館に行った折、偶然にも大正時代の常設展示のなかに、数々のフランス・オペレッタのプログラムを見つけ、大興奮しました。一言で“浅草オペラ”と言いますが、わずか5~6年、清島さんに言わせれば実質的には1~2年の間に熱狂的な流行となった夢の時代には、じつに多様な作品が上演されたそうです。「カルメン」や「ファウスト」のような本格的なオペラ、「ボッカチオ」「ヴェロニック」「フラ・ディアボロ」のようなオペレッタ、佐々紅華(さっさこうか)らが制作した和製オペレッタやミュージカル。末期にはオペレッタとは名ばかりの稚拙な作品も生み出されたそうですが、そんな粗製乱造が行われたのも、このブームが尋常ではなかったから。当時の情報スピードを考えると、現地初演からわずか20年ほどの間に東洋の島国、日本で上演されていた事実は、まさに驚異的というほかはないと言えましょう。なかでも今や、日本では上演される機会すらなくなってしまったフランス・オペレッタについて言えば、私はかの時代を憧れの眼差しで見てしまいます。タイムマシンがないのであれば、もはやわが手で復活させる以外、舞台を見る方法はありません。私が“新宿オペレッタ劇場”で躍起になってフランス・オペレッタの上演をしたのは、ただただ自分が見たいため。本当にそれが目的でした。大正時代、デモクラシイの流れのなか、知的大衆娯楽として受け入れられた“オペラ”そして“オペレッタ”。現在の日本オペラ界が、あの時代をどこか下に見つつも、今なお一つの伝説のように語り継いでいる皮肉な状況を、私は微笑まずにはいられません。

0 件のコメント:

コメントを投稿