2014年10月27日月曜日

第3回ウィーン・オペレッタコンクール本選を終えて

オペレッタ座主宰の黒田晋也先生からお声かけいただいて審査員の一角を務めさせていただいているコンクールの本選がありました。アマチュア部門12人、プロ部門10人で、ひとり2曲ずつの演奏でした。私にとって印象的だったのは、プロ部門も最後から二人目の方が「こうもり」のアデーレを歌ったのですが、そのとき「あれ?今日の本選でアデーレを聞いたのはこの人が初めてじゃない?」と思ったこと。そういえば、ロザリンデもアマチュア部門の方がおひとり歌っただけでした。そうそう。オペレッタコンクールはこうでなくちゃ!「こうもり」はもちろん良いオペレッタです。オペレッタのマスターピース。誰でも知ってる。でもそれをコンクールで歌うなら、こっちをものすごく感心させるように歌ってくれないと納得できないのですよ。それより、まだまだオペレッタには宝の山があるのですよ。良い曲がたくさん。それを自力で見つけてきて素敵に料理してほしい。そんな私の願いが少しずつ叶ってきているなと思えた今回の本選の選曲でした。

さてそうなると審査員室では…が気になるところでしょうが、両方の部門とも、順位の点で先生方から異論はありませんでした。つまり、先生方の付けた点数で順位はあっさり決まってしまったわけです。誰もが納得。唯一議論が大きかったのはプロ部門で1位を出すか、出さないか。このコンクールも3回目になるということですが、その間、1位が出ないというのは厳しい話です。率直に言って。でもオペレッタだからこそ要求したい諸々の要素が、もっとそろって欲しい。1位の人には。そういう思いがこの結論を導きました。私個人の感想としては、プロ部門の方々には発声や技術の先にあるドラマを表現してほしいと思いました。声がきれい、歌が上手というのは当然の前提として、その先の話をしたいのです。オペラもオペレッタも、やっぱりある情感の高まったときにアリアとなっていくのではないでしょうか。突き動かされるものが欲しいのです。お芝居や踊りを入れる方もいらっしゃいましたが、なんだか唐突に動きだすのです。そうする必然性を何も感じないのにオペレッタだから踊らなきゃ、動かなきゃと思うらしい。とても痛々しいのです。見ている方が辛い気持ちになってしまうのです。あとは役柄の研究でしょうか。歌の吟味はしてくるのに役柄についてはノータッチ。オペレッタだからでしょうか?冗談じゃない!苦みのあるシーンをニコニコしながら歌っている不可思議さ。情念のシーンを飄々と歌っている無神経さ。ないね!トスカやノルマでもそうするのかなあ?ヴィオレッタやミミでも、はしゃいで歌っちゃうのかな。絶対しない。オペレッタならいいの?良くないですね。私が「新宿オペレッタ劇場」で発掘しているようなレア作品を歌っているわけではないのですから、いくらでも資料はある。調べようがあるのです。なら、調べましょう。

アマチュア部門については、ある水準を越えるために相応の努力をされて実を結んでいる方と、その努力が勘違いした方向に向いている方、その二種類に大きく分かれたように感じました。勘違いしている人が、方向をわからないまま(習っている場合、その先生が方向を間違っている場合も多々あります)不断の努力を重ねないよう祈るばかりです。アマチュアだから何をやっても自由…なんて横柄さを私は許しません。アマチュアのオペラ団体を率いている人間として、アマチュアだからこそ損得抜き、どこまでも謙虚に、プロが使えない時間をたっぷり使って、研究して練習して珠を磨き上げるのです。お客様に聴いていただく、お客様の時間を頂戴する、自分らの未熟な芸のために。それを徹底的に自覚して舞台に乗るべきなのです。謙虚な自己満足を極めた感動こそアマチュア芸の真骨頂だと私は思うのです。

会場を出たのは午後7時30分くらいだったでしょうか。出場者の方たちにコメントをお渡しするという今回からの新しい試みのために、審査中も頭をクルクル回し、手をシャカシャカ動かしていたせいで疲労困憊。あっという間に時間が経ちました。でも疲労感のなかにオペレッタにたくさん浸った幸福感は確かにあります。この素晴らしい試みがまた来年も発展継続することを願ってやみません。

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